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東芝、経営危機までの10年間~業績・従業員数・年収で振り返る~

[2017.03.14]
Railway in fog on station, outdoor landscape

2015年に明るみとなった不正会計問題から、経営危機に陥った東芝。16年12月には米国の原発事業で巨額の損失が発生することが明らかになり、債務超過に転落の懸念も出ています。

電気洗濯機に電気冷蔵庫、電気掃除機、日本語ワープロ…。数多くの“国内初”を生み出してきたかつての名門企業が経営危機に直面するまでの10年間を、業績と従業員数、平均年収で振り返りました。

売上高は2兆円減少 10年で4度の最終赤字

まずは、東芝の過去10年間の業績を振り返ってみます。

東芝1

東芝の経営危機の“第1波”は、2015~16年に次々と発覚した不正会計でした。リーマンショック後、後手に回った構造改革を不正会計で覆い隠していたことが明らかとなり、経営状態の悪化が一気に表面化しました。

直近10年間の売上高のピークは、リーマンショック前年の2007年度でした。当時はパソコンの販売が国内外で伸びた上、電力システムや産業システム、医療システムなどの社会インフラ事業が好調。連結売上高は7兆6681億円に達しました。

翌年のリーマンショックで売上高は1兆円近く落ち込み、3436億円の最終赤字を計上したものの、2年後の10年度には最終損益も黒字に転換しました。11~12年度は歴史的な円高に苦しみ、再び業績を落としましたが、13年度には営業利益が2571億円とリーマンショック前の水準を回復。業績回復の牽引役は、フラッシュメモリーを中心とする半導体メモリー事業と、医療機器などのヘルスケア事業でした。

ところが2015年、不正会計問題が発覚。米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)を中心に多額の損失を計上した結果、15年度は営業損失が7087億円、純損失が4600億円と、リーマンショック後を上回る過去最大の赤字を計上。売上高は5兆6887億円と、直近ピークの07年度から2兆円減少しました。

そして今、WHで発覚した巨額損失が経営危機の“第2波”として東芝に襲いかかっています。16年度の売上高は5兆5200億円とさらに減り、当初は黒字を見込んでいた営業損益は一転、4100億円の赤字予想に。2期連続で大きな赤字を計上する見通しとなりました。

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不正会計で1.1万人減少 給与はまだ高水準だが…

東芝の従業員数や給与はこの間、どんな推移をたどってきたのでしょうか。有価証券報告書のデータを追ってみました。

連結従業員数を見てみると、10年前の05年度は17.2万人。06年度にはWH買収で一気に19.1万人に増え、リーマンショック後も11年度の21万人まで増加を続けました。12年度以降は減少傾向に転じたものの、そのペースは緩やか。11年度に3.8万人減らした日立や、12年度に3.7万人減ったパナソニックとは対照的でした。

人員減に拍車がかかったのは15年度。この年は、不正会計の発覚を受けた構造改革で、主力事業だった医療機器子会社・東芝メディカルシステムズをキヤノンに売却。画像センサー事業からも撤退し、製造設備はソニーに売られました。
映像事業やパソコン事業は大幅に縮小し、一部事業・部門では早期退職も実施。14年度末に19.9万人だった連結従業員数は、15年度末には18.8万人と、1年で1.1万人減少しました。

東芝2

給与のほうは、リーマンショック後の09年度こそ大きく下がったものの、その後は上昇傾向を回復。11年度にはリーマンショック前の水準に戻り、その後は14年度の844.7万円まで上昇が続きました。
ところが、不正会計が発覚した15年度は、前年度から17万円余りダウン。東芝は16年2月から、管理職社員の給与減額(月額1万円)に踏み切りました。

人員・給与 削減加速へ

人員の減少や給与の削減はさらに加速していくことになりそうです。

東芝は、一連の経営危機を事業の切り売りで切り抜けようとしています。債務超過を避けるため、業績好調な半導体メモリー事業を4月に分社化した上で株式を売却することを決断。16年度はほかにも、白物家電事業は中国・美的集団に、医療機器リース子会社はキヤノンに、それぞれ売却しています。

給与のほうは、16年度から管理職社員の賃下げ幅拡大(月額1万円→月額3万円)や一般社員を含めた賞与カット(2ヶ月分)など“緊急対策”を実施。17年度も継続する方針といいます。

東芝4

リストラで足元の危機はしのげたとしても、再建には程遠いのが現状でしょう。有望視された医療機器はすでに売却し、利益の大半を稼ぐ半導体メモリーも、過半数から100%の売却が取り沙汰されています。売れる事業を売って危機をしのいできた東芝にとっては、半導体メモリー以外に再建を託すことができる事業はほとんど残されていないのが実情です。巨額の損失を出した原発事業も、収益改善のメドは立っていません。

屋台骨を次々と手放す東芝。目先の危機を脱したその先に、再建への険しい道が待ち構えています。