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「働き方改革」を追い風にするエンジニアの働き方

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「働き方改革」と称して、企業が残業の削減や従業員の生産性の向上に本腰で取り組み始めています。これはエンジニア(働き手)にとっても良い事であるはずです。

しかし、企業の意図は法令順守によるリスク低減、残業代の削減、少子化時代における働き手の確保にあり、決してエンジニアにとって良いことばかりではありません。

例えば、残業削減にしても、プライベートの時間が確保できる反面、残業代が減って経済的なゆとりは少なくなります。また、成果へのプレッシャーも大きくなるでしょう。

今回は「働き方改革」という世間の風潮の中で、エンジニアがより幸せになるために、制度をどのように利用していけばよいか考えてみましょう。

効率化ではない。仕事は消してしまおう。

 例えば、「ノー残業日」が設定されて、ご丁寧に人事や組合が見回りに来る。こんな取り組みがなされている会社も多いのではないでしょうか。

確かに、仕事が終われば早く帰る口実になるので良いのですが、突発の仕事や慢性的な人手不足でそういかないことも多いです。何せ、目標・納期は変えずに時間だけ短くしろ、と言われるわけですから。

ポイントはある決まった量の仕事をいかに効率化するかでなく、仕事自体の量を減らすことができないか考えてみることです。

例えば、定例会議をやめてみる、月例報告書をやめてみる、承認者を減らしてみる、等はどうでしょうか。特に定例や慣例の仕事が狙い目です。やめてみて、誰からも指摘を受けなければそれでOKです。私も退職する上司から仕事を引き継いだとき、会議関連は全てやめてしまってメールベースの連絡に変えましたが、何も問題は起きませんでした。

仕事は増やすのは簡単ですが、減らすことは難しいものです。でも、残業削減が叫ばれている昨今では、仕事をやめてしまう提案も受け入れられやすいはずです。この機会に付加価値の低い仕事を消してしまいましょう。

勤務環境を考えよう。

 私の机の上には、20インチのモニターが2台、25インチのモニターが1台あり、トリプルモニターで仕事をしています。また、オフィスには高速なカラーレーザープリンタがあり、サーバーとは高速回線で結ばれています。冷静に考えて、これほどエンジニアの仕事に適した環境があるでしょうか。

エンジニアの仕事はコンピュータや評価設備などのハードウェアを必要とする場合が多いため、在宅勤務だと効率が落ちてしまう傾向があります。もちろん、自宅でそれだけ投資を行えば良いのですが、それは多くの場合自己負担となり、多くの人はそれほどの余裕はないはずです。

また、自宅は誘惑が多いものです。本やゲームなどの誘惑があったり、家族に気を散らされたりと、上司や同僚と共に強制的に仕事に向かうオフィスと比べると、どうしても仕事がはかどりません。在宅で仕事をするためには、オフィス勤務以上に自分を律する力が必要です。在宅勤務を試したことのある方であれば、会社のオフィスがいかに恵まれた環境か実感されていることでしょう。

だから、エンジニアの中でも外回りが多い技術営業系の方、介護や育児など家庭環境の都合でやむをえない方を除いて、積極的に在宅勤務にするのは避けたほうが良いと思います。通勤時間が気になるのであれば、理想は職場の近くに住むことです。

在宅勤務を考えることは職場環境を考えることです。例えば、マウスやキーボード一つとっても、仕事の能率を改善するヒントが詰まっています。在宅勤務やフレキシブルな勤務体系の導入を、生産性を高めるための勤務環境を真剣に考える機会にしたいものです。

副業にチャレンジしてみよう。

 世の中は副業解禁の流れにあります。実際に大手の会社でも、副業解禁に動いた会社もあります。これは収入を得るチャンスが増えて良いと考えていいのでしょうか?

本当のところ、労働者にとって副業の本当の価値はカネではないと思います。真面目に計算してみると分かりますが、使える時間も労力も制限される中で、十分な収入を得ることは簡単ではありません。本業の残業手当や休出手当を超える収入を得ることは至難の業です。

それでも副業はエンジニアにとって、大きなメリットがあります。というのも、エンジニアは確かにやりがいのある仕事ではありますが、職場での出会いが限られ、仕事上の人間関係が制限されているからです。

例えば私の場合、本業の職場には理工系の大卒、大学院卒という学歴の人が9割以上を占めます。一方、ライターとして活動する中では、編集者やクリエイター、コンサルタント、セミナー講師、学校や塾の先生、一番変わったところでは占い師まで、多種多様な方々との付き合いがあります。異業種交流会などでエンジニア以外の人に話を聞けば良いと思うかもしれませんが、副業をすることで自分がある程度責任のある立場に立たないと学べないことも沢山あります。

働き方改革では、75歳まで現役で働くことが求められています。こうした経験は、人生の転機が訪れたときに必ず役に立つことでしょう。そして人生の満足度を高めてくれます。そういう意味で副業解禁の流れは、エンジニアにとってチャンスなのです。

政府や会社主導で進んでいる「働き方改革」ですが、受身でいても職場環境は改善しません。この流れをチャンスと捉えて、自主的に動いてこそ、果実を得られます。この風を追い風にして、エンジニア生活をより充実させましょう。

(エンジニアライター 蔵本貴文)