1. E&M JOBS ホーム>
  2. 用語辞典>
  3. 極低温用新合金

極低温用新合金

よみ
きょくていおんようしんごうきん

 一般に合金鋼は低温になると強さは増すが、伸び、絞り、衝撃値などが小さくなって脆性破壊を起こす。この現象は一般に体心立方晶合金(例えばフェライト鋼)では-200°C以下になると著しく低下する。ところが、面心立方晶合金(例えばステンレス鋼)は-200°C以下でもじん性を維持しているので、フェライト鋼に代わってステンレス鋼が使用される。しかし、ステンレス鋼でも絶対温度0°Cに近づくと不適当とされる。そのため新たな合金鋼の開発が切望されている。ここに、極低温用新合金鋼として開発されつつあるものを上げる。

 (1) 極低温用ステンレス鋼

  18-10ステンレス鋼を主体として炭素および窒素の添加によって強さの向上を図ったものである。核融合用液体ヘリウム容器などに適している。

 (2) 高マンガンオーステナイト鋼

  この鋼は液体ヘリウム温度(-200°C以下)においても、強さ、伸びともよい値を示している。この合金の熱膨張率はオーステナイト系としては例外的に小さく、18-8ステンレス鋼の1/2であるが、衝撃値が十分でなく機械加工性に欠点がある。

 (3) 最近開発されたものとして、Fe-Mn-Al新合金については、従来のFe-Ni-Cr合金に代えて、合金元素が低価額であるので、将来大量に利用が予定される。

  この材料の研究は最初中国で行われ、その後アメリカで開発された合金である。強さ、じん性ともに優れている合金である。鉄に対しマンガンを多量に配合すると面心立方晶を維持したままで多量のアルミニウムを固溶させることができる。アルミニウムを添加することは、オーステナイトの強度を増し、耐食性を増すことになる。これに加えて炭素とシリコンで強さを増強する方法を取る。この合金はアルゴン気流中で高周波溶解によって作られるが、鋳造のままではデンドライトが粗大で、成分偏析が大きいので、次の2段階の処理を実施して優れた新合金が誕生する。(表参照)

 第1段階 冷間加工33%、1150°C 48時間焼なまし、水冷

 第2段階 冷間加工33%、925°C 25分再結晶焼なまし、水冷

 

表2-32 Fe-Mn-Al-C-Si系の機械的性質(いずれも-196°Cのとき)

合 金

0.2%耐力

$$〔\mathrm{N/mm^2}〕$$

引張強さ

$$〔\mathrm{N/mm^2}〕$$

伸び〔%〕 絞り〔%〕

衝撃値

$$〔\mathrm{J/cm^2}〕$$

Fe-30Mn-7Al-0.05C 402 833 80 81 206
Fe-29Mn-6Al-0.17C 519 931 74 81 216
Fe-29Mn-7Al-0.29C 588 1029 72 79 176
Fe-29Mn-8Al-0.5C 755 1176 67 69 157
Fe-25Mn-7Al-0.9C 970 1372 28 30 137
Fe-29Mn-5Al-0.35C-0.8Si 666 1172 62 66 157
Fe-29Mn-4Al-0.3C-1.2Si 706 1127 69 65
Fe-29Mn-4Al-0.29C-1.4Si 725 1176 62 62 118
Fe-29Mn-6Al-0.32C-2.1Si 784 1156 50 48

カテゴリーから探す