世界のターボチャージャー搭載動向・技術開発トレンド

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乗用車販売、主要地域別ターボチャージャー搭載台数/搭載率(2010年/2016年)

▽世界概況
2016年の世界の乗用車販売に占めるターボチャージャー(以下、ターボ)搭載車の販売比率は30.6%で、2010年比で15.6ポイント増加した。

・世界各地での燃費規制強化を背景に、今後はガソリンエンジン車でのターボ搭載が増加すると見込まれ、2025年には55~60%の搭載率になる見通しである。

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▽欧州
2016年の乗用車販売におけるターボ搭載率は70.6%であった。

・ターボ搭載を前提とするディーゼルエンジン車の販売台数が多いことが、ターボ比率を押し上げている。

・ダウンサイズエンジンの開発は一巡したが、エンジン低燃費化は引き続き重要な開発課題であり、小型高効率ターボの搭載は今後も増加する。特にガソリンエンジンへの搭載増加がターボ販売全体を押し上げる。

・48Vマイルドハイブリッド車では電動ターボと機械式ターボの組み合わせを採用するメーカーが多く、こうした電動化ソリューションとの相性の良さも増加要因である。

▽米国
2016年の乗用車販売におけるターボ搭載率は21.1%であった。

・米国市場では今後エンジンのダウンサイズ化が進む。自動車メーカー各社は、ピックアップトラックなどに用いる大排気量エンジンの気筒数削減などを進めており、これとあわせてターボの搭載が増加する見通し。

▽中国
2016年の乗用車販売におけるターボ搭載率は30.4%であった。

・燃費規制強化を背景に2025年頃までにターボ搭載率が50%前後にまで拡大する見通し。

▽日本
2016年の乗用車販売におけるターボ搭載率は18.4%であった。

・軽自動車を中心に小型ターボの搭載が増加傾向にあり、この傾向は今後も継続するとみられる。

主要自動車メーカー、ターボチャージャー関連の動向

▽GM
2013年から2.0ℓ直4ガソリンエンジン(第3世代Ecotec)に電動ウェイストゲートバルブ制御のツインスクロールターボを搭載。

― Chevrolet MalibuやBuick Regalなどに搭載済みで、2018年にはChevrolet Equinox、GMC Terrainに搭載予定。

▽Ford
ターボ搭載を前提とするガソリンエンジンファミリーEcoBoostを多くのモデルで共有。BorgWarnerやHoneywell、Continentalなど複数のサプライヤーからターボの供給を受けている。 ― 2017年に発表した1.0ℓ直3ガソリンエンジン(第2世代EcoBoost)では、Continental製のラジアル軸流タービンを採用。

▽VW
ターボ搭載ダウンサイズエンジンのTSI (ガソリン)とTDI (ディーゼル)をグループ内で幅広く共有している。 ・Porscheは911を2015年から全てターボ搭載に切り替え。

▽Daimler
ほぼ全てのラインアップにターボを搭載している。

・2017年にフルモデルチェンジしたS-Classはガソリン/ディーゼルエンジンともに2ステージターボを採用。 ▽BMW 一部のMiniモデルを除く全てにターボを搭載している。

▽PSA
1.0ℓと1.2ℓの直3ガソリンエンジン(PureTech、EB)は自然吸気とターボの2種類。

・Fordと共同開発の1.4~3.0ℓ直4ディーゼルエンジン(BlueHDi)は全てターボ搭載。1.6ℓの66kW仕様は三菱重工製ウェイストゲート式、90kW仕様はHoneywell製の可変容量式。

▽FCA
Fiatの直2ガソリンエンジンTwinAir は、0.9ℓが自然吸気、1.0ℓがターボ搭載。2017年生産開始の新型1.0ℓ直3、1.3ℓ直4ガソリンエンジンは、当面は自然吸気のみのラインアップ。

・Ram Pickupなどのディーゼルエンジンは主にHoneywell製。

▽日系自動車メーカー
2010年以前は一部の高出力車への搭載が中心であったが、2014年前後からダウンサイズエンジンとの組み合わせで軽自動車を含む幅広いセグメントでターボ搭載が増加傾向にある。

― トヨタの1.2ℓ直4向けはIHI製、2.0ℓ直4向けは内製。
-スバルは2021年度にターボ搭載率を8割にする計画。

ターボチャージャーの技術開発トレンド

▽高出力・高応答性・低燃費・低排ガス
ターボには引き続き、応答性向上や小型高効率化が求められるが、排ガス抑制も考慮した開発の重要性が増している。
― RDE対応では、比出力を徒に高めるのではなく、エンジンマップ全体で効率を改善することが求められる。すなわち、ターボにもライト(適正)サイズ化が求められる。

― コールドスタート測定での排ガス抑制のため、触媒浄化率の早期向上(ライトオフ温度への早期到達)の必要性から、マルチステージよりシングルステージが有利になる。

▽可変容量
ディーゼルエンジン向けでは、燃費と出力を両立する技術として引き続き可変容量ターボの搭載台数が増える。

― エンジン低回転域では、開口面積を小さくして排気の流速を上げ過給効率を高め、逆に高回転域では、開口面積を大きくして抵抗を減らし、排気圧力損失を抑制する。ディーゼルエンジンでは、ターボラグ時の酸素量不足からくる有害物質を抑制する効果もあるため必須の技術となりつつある。
・ガソリンエンジン向けでも可変容量ターボが開発され、一部で量産実績もあるが採用例は少ない。

― 排気圧力が異常燃焼(プレイグニッション/ノッキング)に直結しやすく、可変ノズルの制御がディーゼルエンジンよりもシビアであること、排ガス温度が高温になるため、耐久性確保に費用がかかることなどが理由であったが、少しずつ解消されつつある。 ― 複数のターボメーカーがガソリン用可変容量ターボの信頼性向上と低コスト化を目指した開発を継続している。特に、ミラーサイクルとの組み合わせで大きな効果が得られることから、今後数年で徐々に普及すると見込まれる。

▽マルチステージ
Cセグメント以上の、特に高価格帯モデルでは、2ステージターボの搭載が引き続き活発である。

― 可変容量と2ステージの組み合わせにより、エンジンの低回転域から高回転域まで、より幅広い範囲で高い過渡応答性能・出力性能・燃費性能を維持する。

▽ラジアル軸流タービン
ラジアルタービンと軸流タービンを組み合わせたラジアル軸流タービンを複数のターボメーカーが開発生産している。

▽電動化技術 ウェイストゲートバルブでは電動式が一般的になりつつある。
― 排ガスのバイパス量を能動的に制御し、過給圧を常に最適に保ち、過渡応答性を向上させる。

・電動ターボとの組み合わせが少しずつ増加傾向にある。
― 電動ターボは短時間に高出力を発揮するため、48Vマイルドハイブリッドシステムとの相性が良く普及し始めている。

― ただし作動時間は最長30秒で機械式ターボの作動領域を完全に代替できるものではなく、機械式との併用が前提となる。

・ターボそのものにモータージェネレーターを搭載する電動アシストターボの開発も引き続き進展する。

― 低速走行時や初期加速時にモーターが過給をアシストし、ターボラグを解消できる。十分な排気エネルギーがある場合には、ジェネレーターとしてエネルギーを蓄え次回の加速時に用いる。

・ターボメーカーは、各ターボの性能・耐久性向上のみならず、複数種類のターボシステム間で共通部品を増やし、モジュール化し、生産ラインを共通化するなどして、生産効率の改善に取り組み価格競争力を維持する必要がある。

その他のターボチャージャー関連の最近の動向

▽電動アシストターボチャージャー
通常のターボの同軸上にモーターを追加する電動アシストターボチャージャーを複数のサプライヤーが開発しているが、いずれも量産化には至っておらず、電動化ではターボと電動コンプレッサーの組み合わせが主流になっている。

・Pankl TurbosystemsとFederal-Mogul Powertrainは、共同で48V対応の電動アシストターボチャージャー(EAT)を開発している。 ― 48V電源に対応し、2.0ℓ直4ガソリンエンジンとの組み合わせでEATを試作し、その成果を2017年に発表した。

― ターボのコンプレッサーハウジングとタービンハウジングの間にモーターを組み込む。モーター部分とそれを除くターボ部分の容積比はおおよそ50:50に設計し、通常のターボと比較し90mm全長を延長するにとどめた。

― モーターはエネルギー回生とトルクアシストを行う。
-試作品をテストした結果、通常のターボと比較し0.23ℓ/100km燃費を改善し、0-100km/h加速を0.5秒短縮した。

▽3Dプリンターによるインペラの積層造形
金属粉末を積層して加工する金属3Dプリンティング技術によりインペラを製造する取り組みが進められている。
― 航空機産業では、一部で既に実用化されており、今後は自動車産業でも普及する可能性がある。

― インペラの形状はターボの効率を大きく左右する部品であり、多くの開発者がシミュレーションによる理想的な形状を追求している。インペラの複雑な形状は、切削加工ではなく積層加工に適したものが多い。

▽ターボを含む制御ソフト開発
Honeywellはターボを含むパワートレイン全体の動作を最適化する制御系ソフトウェア開発ツールキットOnRAMP Design Suiteを自動車メーカーや開発研究機関向けに供給している。

― 世界の自動車産業は内燃機関や排ガス後処理などに関連するパワートレイン制御系ソフトウェアの開発・キャリブレーションに年間20~40億ドルを費やしていると推定。

― OnRAMP Design Suiteは、開発期間を月単位から日単位に短縮し、ターボなどサブシステムを含むパワートレイン全体の低燃費化・低排ガス化を容易にする。

・またHoneywellは、リアルタイムOBD(オンボード診断)のセキュリティ技術開発のため2017年9月にLearとの提携を発表した

▽板金タービンハウジング
カルソニックカンセイはターボのタービンハウジングを板金化したCK-SMiTHを市場投入し、2017年10月に公開した。

― ディーゼルエンジン車向けとしては世界初の製品。 ― 内部に空気層を設けた中空構造。 ― 従来の鋳物ハウジングと比較して15%の軽量化を実現。さらに、ターボの下流に配置される触媒の昇温性を向上し、コールドスタート時の排ガス浄化性能向上にも寄与する。turbo_bankin_photo ▽BoschとMAHLE、ターボ合弁会社を売却
・BoschとMAHLEは2017年9月、両社のターボ事業合弁会社であるBosch Mahle Turbo Systems (以下、BMTS)を投資ファンドFountainVest Partnersに売却する計画を発表した。

― BMTSは2008年に設立。ドイツ、中国などに拠点を持ち、従業員数は約1,300人。
-寡占4社によるターボ開発競争・価格競争が激化するなかで、BMTSのシェアは一貫して低迷しており、今後の収益性を見通せないことなどが売却の要因とみられる。

FOURIN世界自動車技術調査月報(FOURIN社 転載許諾済み)>

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