【医療機器メーカー・年収比較】トップは内視鏡世界シェアNo.1のあの企業
[2017.03.23]日本の成長産業としても期待される医療機器。欧米勢が圧倒的に強いこの業界ですが、国内メーカーも得意分野では世界でも高いシェアを握る製品を持っている企業も多くあります。高齢化を背景に需要も拡大基調にある中、年収も上がっているのでしょうか?
上場している国内の主な医療機器メーカーの年収事情を、有価証券報告書のデータから覗いてみましょう。
年収トップは870万円のオリンパス
公表されている有価証券報告書のデータをもとに、上場医療機器メーカー19社の2015年度の平均年収をランキングしました。
トップとなったのは、消化器内視鏡で世界シェア7割以上を誇るオリンパス。平均年収は870万円(平均年齢42.1歳)でした。2位は生体情報モニター国内首位の日本光電で、869.6万円(41.1歳)。カテーテルやペースメーカーなど心臓血管領域の製品を扱う日本ライフラインが834.7万円(38.8歳)で3位となりました。
主な製品が診断に使われる機器か、治療に使わる機器か、衛生材料かで企業を分類すると、平均年収では診断機器を扱う企業が上位をほぼ独占。7位のフクダ電子を除くと、診断機器メーカーの平均年収は700万円台後半~800万円台後半の水準です。
一方、治療機器メーカーの平均年収は、3位の日本ライフライン、8位のテルモを除けば600万円台以下。最も低かったのは衛生材料メーカーの川本産業(440.5万円、37.1歳)で、トップのオリンパスとは430万円の開きがあります。
それぞれの分類ごとに年収の平均を計算してみると、診断機器(6社)が814.6万円、治療機器(11社)が602.8万円、衛生材料(2社)が510.6万円。扱っている製品によって年収事情がくっきりと分かれるのが、医療機器業界の特徴と言えるでしょう。
【診断系】伸び率トップもオリンパス 5年で28%アップ
ここからは、集計対象とした企業を「診断系」と「治療系・衛生材料」に分類して、5年前の2010年度と平均年収を比べてみます。
まずは診断系から見ていきましょう。
診断機器メーカーで5年前からの年収アップ率が最も高かったのは、平均年収でもトップのオリンパス。5年間で28.2%増と業界でも断トツの伸びとなっています。
オリンパスの業績は、リーマンショックによる世界的な景気悪化や急激な円高により、2008年度に500億円を超える最終赤字を計上しました。2009年度には一旦525億円の最終黒字を確保したものの、2010年度には再び93%の最終減益に。これに伴い、これまで700万円台後半で推移していた平均年収は、2009年度に一気に624.4万円まで下落しました。
その後は内視鏡をはじめとする医療機器の好調を背景に業績を回復。11年には不正会計問題で490億円の最終赤字を出したものの、15年度は医療機器を含む医療事業が過去最高の業績を更新し、売上高に占める営業利益の割合も13%と過去最高となりました。業績回復に従って平均年収も上昇し、15年度はリーマンショック前の水準を大きく上回りました。
オリンパスに次いで伸びが大きかったのが、平均年収ランキングでは4位のオムロン。アップ率は16.4%でした。
オリンパス同様、オムロンもリーマンショックによる景気悪化で2008~2009年度にかけて業績が落ち込みました。700万円台後半~800万円台前半だった平均年収は、09年度には653.5万円まで下落。その後の業績回復にともなって平均年収も伸び、15年度はリーマンショックを上回る水準に達しました。
アップ率3位は心電計や生体情報モニターなどを展開するフクダ電子。4位はX線撮影装置など画像診断機器を手がける島津製作所でした。10%を超える伸びとなった2社を除けば、年収のアップ率は1ケタ台前半から半ばとなっています。
【治療系・衛生材料】伸び率はニプロが1位
治療系・衛生材料はどうでしょうか。
治療機器メーカーで年収の伸びが最も大きかったのは、人工腎臓など透析関連の製品と注射針やカテーテルなど注射・輸液器具を中心に展開するニプロ。平均年収ランキングでは16位(539.6万円、37.9歳)でしたが、この5年間では平均年齢が0.7歳下がる中で7.4%のアップとなりました。
アップ率2位は、手術器具や歯科治療器具を扱うマニー(6.4%増)、3位はカテーテルなど心臓血管領域に強いテルモ(5.9%増)。歯科治療器具のナカニシ(5.7%増)や人工腎臓で国内トップシェアの日機装(4.7%増)、透析用カテーテルのメディキット(4.6%増)も、似たような水準の伸びとなっています。
この5年間で平均年収が下がったのは、川本産業(9.9%減)とホギメディカル(0.9%減)の衛生材料2社と、輸液や透析の機器を扱うJMS(3.4%減)、人工腎臓などを展開する川澄化学工業(0.2%減)の4社。ダウン率が大きい川本産業は、14年度、15年度と2年連続で最終赤字を計上しています。
「診断機器」「治療機器」「衛生材料」の企業分類ごとに平均年収の5年間のアップ率を計算してみると、診断機器(6社)は10.8%増と2ケタのアップ。治療機器(11社)も3.6%増えましたが、衛生材料(2社)は5.0%下がりました。
厚生労働省の薬事工業生産動態統計によると、国内の医療機器の生産額は2009年には1兆5762億円まで落ち込んだものの、その後は5年連続で増加。14年には1兆9895億円とおよそ2兆円の規模に達しました。
日本を含む先進国の高齢化や、新興国の医療水準の向上などにより、今後も需要の拡大が続きそうな医療機器業界。年収も伸びていくのか、注目です。