【工作機械・年収比較】1位はファナック、中心は600万円台
[2017.07.04]「機械を作る機械」「マザーマシン(母なる機械)」とも呼ばれ、その性能の優劣がその国の工業力全体に影響を及ぼすといわれる工作機械。工作機械の受注動向はすべての産業の設備投資を先取りしたものであるため、景気の先行指標とも言われています。そんな工作機械関連企業の年収はどのくらいなのでしょうか?
各社が公表している有価証券報告書のデータをもとに、日本の主要な工作機械メーカーや関連企業26社をピックアップし、平均年収のランキングを作成しました。ちなみに総合大手のひとつ、ヤマザキマザックは上場していないため、ランキングから除外しています。
1位ファナックは1571万円!工作機械唯一の1000万円超
堂々の1位は工作用機械CNC装置で世界シェアトップファナックで、平均年収は1571.1万円(平均年齢42.9歳)です。
2位は金属加工機械分野で国内トップシェア、特に板金機械で強みを発揮するアマダホールディングスの787.6万円(46.5歳)、3位は旋盤のスター精密の763.0万円(42.8歳)が続きます。
1位のファナックは2位以下を大きく引き離し、唯一の1000万円超。中国市場の需要低迷を受けて前年度より減少したものの、2015年度の売上高は6234億円となりました。工作機械メーカー全体のボリュームゾーンは600万円台となっています。
5年前と比較した伸び率は?
各社の最新の年収と5年前との比較ではどのようになっているのでしょうか。
全体の傾向としては、マニシングセンタメーカーの年収アップ率が高く、旋盤やその他メーカーの年収アップ率はどちらかと言えば低めの傾向です。
年収のアップ率がもっとも高かったのは、年収でもダントツ1位だったファナックで60.2%。ファナックは工作用機械CNC装置で世界シェアトップ、国内シェアも7割を占め、売上高利益率が4割近くを保っていることでも有名です。
2016年は中国をはじめとするアジアの需要低迷によって厳しい経営状況になったものの、FA(工場の自動化)・ロボット・ロボマシンが一体となったトータルソリューションに加え、IoTへの対応を強化することによってさらなる成長を図るとしています。
アップ率2位は総合大手のオークマで52.2%のアップ率。オークマはヤマザキマザック、DMG森精機、ジェイテクトと並ぶ国内4大工作機械メーカーの1つで、2018年には創立120周年を迎えます。最近では海外への輸出比率70%以上を目指した取り組みを進めています。
3位は太陽工機で、5年間で50.0%と、1.5倍になっています。太陽工機は新潟県に本社を置くDMG森精機の連結子会社で、研削加工技術の分野に特化した開発力が強みです。加工物を横向きに置く横形研削盤が多い中、1989年に業界でいち早く加工物を立てて置ける立形研削盤を開発しました。この立形研削盤は同社の主力商品となっています。今後は中長期目標の1つとして海外売上高比率50%の達成を目指し、海外拠点の強化を図ります。
一方でアップ率最下位は浜井産業のマイナス11.7%。創業当時から作り続けていて現在も主力商品であるホブ盤の需要は安定しているものの、2009年度以降はほぼ毎年、営業赤字が続いています。黒字化を図るため人件費削減などを進めており、給与のアップ率では唯一のマイナスとなりました。
今後の生き残り競争はますます過酷に
これまで先進国を中心としきた工作機械の需要は、21世紀に入って新興国に広がってきました。同時にアジアのメーカーによる価格競争力の高い工作機械の開発も進んでいます。そのため、これまで大企業からニッチ市場を埋める中小企業まで、大小さまざまな企業が混在し、各々棲み分けがあった日本の工作機械業界の構造に変化が起きています。
また、多くのメーカーが中長期計画に盛り込んでいるICTやIoTの活用も重要性が高まり、データ収集などで強みを持つ大企業の優位性が高まることが考えられます。こうしたことから中小、大手ともに生き残りには特定分野への強みを発揮すること、またグローバル戦略の展開などがますます求められてくるでしょう。