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TU Automotive 2017で見えてきた自動運転量産化の課題

[2017.10.10]
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自動運転は、かなり昔から議論されているにもかかわらず実現していない。レベル3やレベル4の実現は2018年、2019年で、レベル5に至っては、いったいいつになるのかわからないという状況が続いている。
例えば、Daimlerが欧州委員会のPROMETHEUSプロジェクトで前走車追従機能の付いた試作車を発表したのは1986年で、それから約30年を経て、レベル2自動運転機能が付いたS-Classがようやく量産された。なぜこんなに時間がかかるのか。

その理由の一つとして、部品やシステムの構成が以前よりも複雑化していることが挙げられる。1999年当時の自動クルーズコントロールでは、レーダーとエンジン制御、ステアリング制御、ディスプレイの4つのコンポーネントが主に関係していた。
しかし、2017年時点で開発中のレベル4自動運転に必要とされる主要コンポーネントは少なくとも24はある。これらを一つの中央統合型ECUで制御しようとすると、問題はさらに難しくなる。コンポーネントの組み合わせは天文学的な数になり、そのプログラミングはそれだけ高度になるからである。

<レベル4自動運転に必要な主なコンポーネント>
レベル4自動運転に必要な主なコンポーネントを説明する写真。Radar, Camera, LIDAR,Sonar,Steering Wheel Sensors, Wheel Speeds, IMU/Gyro, GPS, Moving objects, Static obstacles, Lanes, Signs, Vehicle ego motion, Trajectory planning & control, Fail-safe/-degraded mechanisms,Motor Speed Control, Regenerative Braking, Brake Pressure, Steering Angle Control, Head Unit, Side Tasks, Functional safety, Redundancies(クリック/タップで画像を拡大表示)

また、以前の試作車と現在開発中の自動運転車の制御ソフトウェアを比べると、アルゴリズムによる制御が根底にある点では同じだが、現在開発中の自動運転車を量産化するには、機能安全、コードの品質など、数多くの認証が必要になる。
ECUの最適化、ECUとBUSのアーキテクチャ、既存のアーキテクチャ、安全関連の制約、何百万kmにも及ぶ走行試験、これらが全部行われて初めて高度自動運転車が完成する。NVIDIAのDrivePXを搭載すれば済むというような簡単な話ではない。

1986年の試作車(左)と2016年のS-Classのアーキテクチャ(右)の違い>
1986年の試作車の写真と2016年のS-Classのアーキテクチャのフローの図(クリック/タップで画像を拡大表示)

自動車産業特有の問題も指摘できる。自動車のモデルサイクルは長く、スマートフォンとは全く異なる。

車両の量産を開始するのにプロトタイプ製作から7年を要する。
何らかのプロトタイプが道路を走行し、レベル5自動運転に見えるような走行が仮に実現したとしても、そこにはテストドライバーが乗車している。もう間もなく高度自動運転が実現するかのようなプレスリリースがいくつかの自動車メーカーから出ているが、その多くは今後の開発見通しを前提とした発表であり、生産開発の立場からしてみれば、これらのプレスリリースを実際に量産に繋げるには膨大な課題があり、大きなプレッシャーとなっている。
システムをどのようにして認証し、最適化するか、そして何よりシステムアーキテクチャの冗長性をいかにして確保すべきか、課題は多い。自動運転関連の新しい技術論文が数多く出されても、それらがすぐに量産仕様に採用されるわけではない。

IntelによるMobileyeの買収のように、巨額な投資マネーがこの分野に流入している。スタートアップの買収も盛んである。
しかし、それは裏を返せば、必要な技術を誰も持ち合わせていないことを意味している。スタートアップの買収は、数を打てば当たるだろうという論理で行われている。

 

Dr. Björn Giesler氏 (Elektrobit, Head of Driver Assistance)のTU Automotive 2017講演および広報資料を基にFOURIN構成)